青の書斎

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HGUC060「パラス・アテネ」レビュー

今回のレビューは「パラス・アテネ」です。

 

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〇キットの概要

本キットは『機動戦士Zガンダム』に登場する機体「パラス・アテネ」を立体化したもので、旧キットでは付属しなかった武器・防具が全て揃ってHGUC化されました。

色分けは付属のシールを貼ることで、及第点程度までカバーできると思います。組むだけで十分カッコいい『パラス・アテネ』を手許に置くことができます。塗装派にはもちろん、素組派のモデラ―さんへ特に強くお勧めしたい商品です。立体物としての完成度が非常に高く、素組だけでも十分に楽しめることのできる大変優良なキットだと思います。

〇デザインと魅力

火力機であることを示す大型ミサイル8基が、機体の背部から放射状に伸びます。これらがいわば「集中線」の役割を担い、「パラス・アテネ」本体の存在感を際立てています。

ミサイルに限らず、天へ向かってそびえる2基のバックパックユニットやブレードアンテナ、左右のショルダーアーマーから突き出す計4基のスラスター、あるいはレッグアーマーに走る黄色のラインなど、「線」を感じさせる要素がそこかしこに配され、本機のデザインを引き締まったものにしています。

ゲルググ」は和装の裃(かみしも)を思わせるデザインでしたが、一方「パラス・アテネ」は襟の立った洋装で、貴人の装束のようにエレガントな印象。左右に控えるショルダーアーマーは卵型で、放射状に配されたモールドが拡散ビーム砲の鮮やかなピンクを引き立てています。

Zガンダム(機体名)」や「リック・ディアス」「マラサイ」といった他の機体の肩を見ると、必要な部品が無駄なく取り付けられた印象を受けます。一方「パラス・アテネ」の肩は、ダクト状の機構を介した先にスラスターが配してあり、調度品のような遊びの要素を感じさせます。こういった「兵器に対して美術品のような性格を与えるデザイン」は「PMXブランド」の特徴の一つであるように感じます。

機体名の元となったギリシャ神話の女神「アテナ」は、戦いの訓練のさなか気持ちの高ぶりから親友「パラス」を自らの手で殺めてしまうという業を背負った人物で、「パラス」の死後「パラス・アテナ」と名乗るようになったとのこと。この後ろ暗い過去が、所属軍を裏切ってしまうパイロット「レコア・ロンド」の人物像と重なるところがあります。機体に古代ギリシャの戦士を想起させるタージェ(Targe:小型の盾)を持たせたのは、そのためかもしれません。「ギャン」の盾と似ていますが、タージェのほうがより薄く、素朴なつくりになっています。

素組だけでも十分に見栄えのする「パラスアテネ」。随分価格が高騰してしまった印象ですが、是非お手元に一機置かれてはいかがでしょうか。